紀州熊野を巡る 紀伊大島 朝貴神社と海金剛

熊野灘
紀州へ旅に出ました。
主な目的は、熊野那智大社から熊野本宮大社までの熊野古道・雲取越を踏破すること、熊野地方に多く坐する磐座巡りをすること、そして「紀の國」の空気を実際に行って感じること等々・・・。

私自身にとって「紀の國」と聞くと中上健次著の「紀州」で描かれた『闇に沈んだ国』というイメージが色濃く、さらに「熊野権現」の在り様、冥界への入口、隠国、浄土の地・・・といった馴染み浅い独特の形容詞、または、神と仏、土着信仰とマレビト信仰、岩神と水神、中上健次の淀んだ世界と世界遺産の清らかな世界・・・
あまりに表裏混沌とした感じがして掴みどころがないように思えるからだろうか。

しかし、まとまった時間を取ることができたので、「根の国」「木の国」と呼ばれる紀州熊野の各地を巡ってみることにした次第です。

フェニックス褶曲があると思われる地
さてさて、南紀白浜空港でレンタカーを借りてまず立ち寄った場所は『フェニックス褶曲』。
地質学的に非常に珍しい地層らしく見学してみたかったが、磯浜を歩かねばならないのと、場所も今一つ不明で少々危険かな?と判断してしまい諦めてしまった。

気を取り直して、「熊野古道大辺路」を車で一気に駆け抜けて本州南端の地・串本へ。
紀伊大島の対岸にある出雲崎に鎮座する朝貴神社へ参拝してみることにしました。


朝貴神社
(和歌山県東牟婁郡串本町出雲58番地鎮座)

潮岬半島は本州最南端の地。
半島西端には有名な潮岬があるが、東端には『出雲』という名の小さな集落があり、海に面した小高い丘の位置に朝貴神社というお社が鎮座している。

主祭神は出雲の神・大己貴命。
その他配祀神として、天照大神 火々出見尊 火産霊神 蛭子命 熊野夫須美神 速玉男神 家津御子神が祀られている。

朝貴神社境内
創建・由緒
長禄二年(1458年)、藤原鎌足公の嫡子伊美麿から二十五代の裔神祇大副卜部兼倶が熊野参詣のとき出雲国(須賀神社)より勧請し創建という。
紀伊続風土記は「伊勢大神宮の摂社礒辺の神(伊雑宮)を祀るという」考えをとっている。

鈴門
卜部兼倶といえば、『唯一宗源神道』(神道は仏教・儒教の教え等を交えることのない、我が国固有の惟神の道)と唱えた吉田神道の事実上の創始者。
その彼が何故、『本地垂迹思想』(神の本来の姿は仏様とする神仏習合の考え)の中心地である熊野の突端に位置する潮岬・出雲の地に自ら勧請し創建されたのだろう?

ちなみに、江戸時代は浅木明神社といわれ崇敬されていたが、明治初(1868)年神仏分離の動きのなかで朝貴明神社とも改称したが、朝貴神社と現名にした。

鈴門の脇にはシャコ貝が置かれている。
伊豆半島近くにある神奈川県小田原市早川に鎮座する紀伊神社でも同様にシャコ貝が祀られていた・・・。
やはり伊豆と紀州は大きな繋がりがあるのだな、と少々こじつけてみた。

出雲崎
お社の裏手に周ると、出雲崎の美しい風景が広がる。
歴史的な因縁(?)を抜きにして実に心安らぐ場所です。
しかし、ここも何となく出雲・加賀の潜戸に似ているように思えてしまう。

Link⇒出雲路を歩く 加賀の潜戸 (1) 奇蹟的な未開の絶景
をご参照ください。

オソのガバ
奇石群の一角には「オソのガバ」と呼ばれる小さな洞窟がある。
昔々、この洞窟にオソ(カワウソ)が棲んでいて、海で泳ぐ子供の尻を取りにくると恐れられていたが、朝貴の神様が懲らしめて追い払ったという民話が残されているらしい。

出雲崎から見た紀伊大島
さて、折角なのだからと思い紀伊大島へ。
現在はおおしま大橋により簡単に島へ行くことができるが、1999年までは串本から出航するフェリーのみが交通手段だったという。

日本最古の樫野埼灯台
ここ大島について中上健次は『紀と根の相互の流れがぶつかる場所』と表現している。

神武天皇一行は高千穂から浪速に上陸し大和へ攻め入ろうとしたが、地元の豪族長髄彦の攻撃にあって失敗し、紀伊水道をくだって、ここ大島に着き、軍勢を整えて「隠国」に向かったとされている。

エルトゥールル号殉難将士慰霊碑
また、1790年代に米国商船レディ・ワシントン号が入港し、1890年トルコ艦船エルトゥールル号が遭難した大島。
大阪から江戸への帆船交通にて立寄地とされてきた大島。
男衆がひと稼ぎするために捕鯨基地にやって来る、稼ぎ場としての大島。
そして、男衆を慰めるため遊郭として新宮、または大阪から流れ着いた女郎の場末の地だった大島・・・。

海金剛
紀伊大島は、正に「マレビト」が訪れ去っていくクロスロードのような島であり、そこに住む民達は、常に「マレビト」に翻弄されながら此の地で生き続けているように感じてしまったのは考え過ぎでしょうか?

大耳崎
次回は串本・古座の地にある奇石群を巡ってみましたの巻です。

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