9 October 2010

出雲路を歩く 加賀の潜戸 奇蹟的な未開の絶景と漁師さんとの出会い


加賀の潜戸 - 潜戸鼻まで行ってみた



黄泉比良坂で怖い想いをした後は、最大の目的地のひとつ、加賀の潜戸といわれる洞窟島へのクルージングに乗りこむべき、車を飛ばして一路日本海側へ向かった。

松江の情緒溢れる城下町もスルーして、ひと山超えて船の発着場へ向かい、最終便に間に合ったのだが、チケット売り場にはカーテンが締められて、無情にも次の看板が・・・。

「本日は時化(しけ)の為、運行中止とします。」

・・・がっかり。

・・・と、さすがに落ち込んでしまった。
(上の写真は取り敢えず発着場の風景をパシャリました)

「ああ、僕の旅運もこれまでか・・・」と一瞬思ったが、「だったら車で行けるところまで行けばいいや」という単純な事に気付き、陸路で進むことにしたのだが・・・

ひとつの集落(なかなか味わい深い集落だったが、停まる余裕なんぞなかった)を通過してからは、軽自動車一本入るのがやっとという位細く急坂な山道を登ることに・・・(涙)

Uターン出来る事を見つけたら引き返そうと思っていたら、急に眼下に日本海が広がってきた!
そして、その光景の物凄さに目を奪われるのであった。。。

明らかに人手の加えられていない浅瀬。
剥き出しの火山岩と、生い茂った緑色の海藻、そして海面に反射して映し出された青すぎる空。

すこし海に目を遣ると、奇石・巨石の塊がゴロゴロと転がっている。
そして、足元には数多くの奇妙な軟体動物や魚といった生き物が溢れんばかりに存在していた。

まるで有史以前の地球の姿のよう!

ここは、加賀潜戸 的島。
一本の松の木と独特が岩の形がとても神々しく拝見できる。

加賀の潜戸は、2つの潜戸があり、新潜戸(神潜戸)と言われる場所は、東出雲地区の祖神、佐太大神の生まれた地とされている。

『出雲国風土記』によると、佐太大神が生まれようとしていた時、母神の支佐加姫(ささかひめ)が、「暗い岩屋だなあ」と言って、黄金の弓で矢を射た ところ、洞窟が光り輝いた「光加加やけり」とされ、そのため、この洞窟が「加加」(=加賀)といわれるようになったと伝えられている。

対して旧潜戸(仏潜戸)の洞窟内には、仏になった子供らが親を慕い小石を積み上げたと伝えられる賽の河原があり、亡き子供が着衣していた服や履物がお供えされているらしい。

とはいえ、残念ながらボートに乗れなかった小生には、実際の加賀の潜戸の事は良く分からない。
しかし、人智を超えたカオスな空間に運よく足を踏み込めただけでも充分満足だし、殆どの人達が近づかない地を「独り占め」できた気分になり有頂天!

恐るべし、出雲地方の「未開の」大自然!!

ちなみに地質学的に、この地について語ると・・・

“1400 万年前頃(中新世)の島根半島は海底で、多くの海底火山が活動しており、とくに加賀と東海岸の笠浦を結んだ線より北側には、巨大な海底火山があった。この海底火山は深さ数100m の海底に
発生し、しだいに成長して火山島になったと考えられている。”

らしいです。

引き続き誰もいない加賀鼻を散策しました。

地球、そして日本にいる事を忘れさせるような風景が広がっている。
神秘的とも霊的とも受け止められるような絶景である。
そりゃ、「根の国」の入り口と謂われても納得がいく。

浅瀬に目を向けると、そこは昨今のキーワード「生物多様性」の宝庫。
図鑑とかでしか見た事のない生き物がうようよと生息している。

例えば、これとか・・・。

これとか・・・。
「ここはカンブリア紀(約五億年前)の地球みたいだな」と想像していたら、ひとりのおっさんに声を掛けられた。

「あんたは、学者さんかい?」

いいえ、ただの観光客ですよ。と、答えたら・・・

「こんなところ、学者か密漁者位しか来ないんだよ。」


との事。

ここには、溶岩流出の跡が岩盤にくっきりと残っていたり、黒い玄武岩と白茶色の火砕岩の岩脈が分布しており、過去(1400万年前)の海底火山の噴火により、島根半島が形成された面影が今尚、(海水の浸食があるにせよ)手つかずの状態で残っているのだから、地質学的に貴重な場所なのだろう。

そして出雲風土記の「国引き神話」の由来になっているのかな?と想像できる。

さて、話を漁師さんとの話に戻して。

この地域の事や密漁者の事、そして朝鮮半島からやってくる漂流ゴミに困っている事など、多岐に亘って話を聞かせてもらった。

そして、下の写真の生き物を見つけると・・・

「おめえ、これどうなるか知っているかぁ?」


と、質問され「分からない」と回答すると、彼は竿をこの生き物へ目がけて振りかざした。

「おりゃっ!」

うおおーっ!

この生き物は「海牛」という生き物で、古来は紫色の染料とされてきたらしい。
(ただし、漁師さん曰く、「食べてもうまくねえぞー」とのこと。)

本日の釣果。
・・・といっても、海藻と小さい貝だけやん(笑)

加賀鼻を背景に、おっさんと写真の撮り合いをしたり、住所交換したり、何故か果物をくれたり、とても優しい伯父さんでした。

しかも、平田に帰るといったら、「そりゃ、遠いなー。家に泊まるか?」とまで言ってくれて・・・。
何て優しいのだろう!!

帰り道も、広い通りまで先導してくれて、伯父さんの心優しさにボクの心も温かくなって、帰路に就くのであった。