まずは、大里家について。
大里家は、島の始祖家のひとつで、「五穀世大里(グウクウユーウプラトゥ)」「種世(サニュー)大里」と呼ばれており、五穀の神様といわれるシマリバーとアカツミーが祀られています。
琉球の稲作伝来神話は、受水走水(←リンク)の項にて記しましたが、五穀(麦、粟、アラカ、小豆)については、ここ久高島の大里家が発祥の地とされております。
堅牢な石垣、そしてヒンプンとよばれる藩塀のような目隠しの先にひっそりと古家が建っています。
門の先の左には古びた大里家、その右手にはシマリバーとアカツミーを祀った拝殿が坐しています。
さて、この大里家は琉球五穀伝来神話の主人公とされており、以下の神話が残されている。
☆穀物伝来神話☆
昔大里家にシマリバー(女)とアカツミー(男)が住んでいました。
ある日、アカツミーはイシキ浜で漁をしていたところ、沖の方から白い壺が流れてきた。
アカツミーは壺を拾おうとするが、沖に戻されてなかなか取れない。そこでアカツミーは一応帰り、そのことをシマリバー相談しました。
シマリバーは、
『まずヤグルガー(井泉)で身を浄めて白い着物を着て挑めば白い壺は取れるぞー!』
と教えてくれました。
大里家 |
そると、先程まで取れなかった白い壺が、ふしぎなことに難なくアカツミーの白衣の袖に入り、取ることができました。
その白い壺には麦、粟、アラカ、小豆の種が入っていて、麦と粟はハタスということころに植え、壺はそこに埋めました。
麦、粟はここからシマ中、クニ中に広められたとさ。
(以上、比嘉康雄著「日本人の魂の原郷 沖縄久高島」より)
尚、旧暦二月と十二月におこなわれる『ウプヌシガナシー』という祭祀のときに、アカツミーとシマリバーの神霊を引き受ける神職者に憑依して神話が再現されるといいます。
アカツミーとシマリバーを祀る拝殿 |
一番古いムトゥ(草分家)である大里家の娘クゥンチャサンヌルは優れた目に見えない異界と交信する超能力をもったヌル(巫女、シャーマン・ティンユタ)であった。
琉球王朝の尚徳王が鬼界島征伐後凱旋報告のため来島したとき、クゥンチャサンヌルと恋に落ち、政治を忘れてロマンスの日々を久高島で過ごしていた。
すると、首里城で革命が起こり、尚円王(金丸)が王に就いてしまった。
それを知った尚徳王は帰りの船中から海に身を投げてしまい、それを知ったクゥンチャサンヌルは、大里家の前のガジュマルで首吊り自殺をしたとさ・・・。
アカツミーとシマリバーのお話は久高島の女性は神女となり、神託を受ける存在であることを示唆しているように感じ、さらに、琉球王がわざわざこの小さな島の巫女(ティンユタ)であるクゥンチャサンヌルに会いにいくというお話は、久高島の巫女には不思議な力を持っているということを現しているように思えます。
次回はシマの重要な祭祀場である外間殿についてです。